トン先生のコラム  良い病院・医院の見分け方

 病院、医院に行く患者様は、それぞれ皆様が持つ口コミでどの医療機関にかかるか判断されることが多いように思います。友達が行って良かったとか、受付が親切だったとかです。
玄関を入るとき、どんな医者がいるのやら?、どんな看護婦がいるのやら?受付は不親切でないだろうか?きちんと話を聞いてくれるだろうか?自分が言うことを分かってくれるだろうか?などなど大変な緊張感なのではないでしょうか?
そんな方のために、少しでも役に立つ判断の仕方を医者側からお伝えします。
これは、シリーズものとしてぼちぼち書いていきます。請うご期待!

その1  玄関が汚れているところはちょっと・・・
これはお料理屋さんやお菓子屋さんでも同じ事が言えますが、玄関は顔です。そこが汚れていたり散らかっていたりするところは、できるだけ避けたほうがよいと思います。
建物が古いという事ではなくて、基本的に人を迎え入れようとする場が、散らかっていたり汚れていては、来られた方が不快感を感じます。きらびやかな事を言っているのではなく、普通に綺麗に掃除されているかどうかと言うことです。

その2  受付の対応が悪いところはちょっと・・・
初診の患者様は、皆様、保険証をおだしになります。このとき、受付の対応が丁寧で、患者様の気持ちを理解しようとしているかがチェックポイントです。受付は一般的に忙しいのですが、どんなに忙しくても患者様の訴えを聞く姿勢を持つことはいうまでもありません。受付は、ソフトな面での医療機関の顔です。一生懸命さが患者様に伝わるような受付でありたいと思っています。医療はチームで行います。受付、看護婦、医者がチームとして医療を行っています。良い医療を行うためにはスタッフの一人一人が、自分の仕事に誇りを持ち、"患者さまの健康と幸せを願う"職業であることを自覚しているような病院、医院を見つけることが大切でしょう。どんなに忙しくても、その気持ちが感じられる病院、医院を探しましょう。

その3 待合室は情報の場
待合室には、その医療機関の治療方針がわかる何かがあるはずです。治療方針がわかる医療機関は安心であると言えましょう。病気についての説明などが簡単に閲覧できるような医療機関がよいでしょう。医療サイドからいいますと患者様にも、ご自分の病気についてある程度知識を持ってもらいたく思っています。自分の病気がどんなものであるかを理解して医師といっしょに治療していく体制作りが大切なのです。医師の治したいと言う気持ちと患者様の治りたいという気持ちの相乗効果で病気は改善に向かうのです。

その4 整理整頓
また、雑誌、本などがきっちり整頓されていることもチェックポイントです。床にごみなどが落ちていては、清潔をモットーとする病院にはあってはいけないことなのです。この辺も良い病院選びのチェックポイントでしょう。

その5  電話対応
電話対応の悪いところは、もう論外です。もちろん忙しい場合、電話で手短にお答えして診察でないと分からないことも沢山あります。医療サイドから患者様に希望することは電話では分かりかねることが沢山あるということです。こんな症状なのですがどうしたら良いでしょうかと聞かれても、スタッフは医師ではありませんからある程度のことしかお答えできません。そう言う意味では医師の診断が最も重要になります。もちろん、電話であっても病気のことを良く説明してくれる医療機関がよいのは言うまでもありません。電話を取るスタッフは、常日頃その医療機関が扱う病気のことを良く勉強しています。
スタッフの方々が良く勉強されて、営業的なしゃべり方でなく、丁寧に親切に誠意をもって病気のことを教えてくれるところは良い医療機関であることが多いのです。
さて、次は実際の診察室です。どんな医者が良いのでしょう。
診 察

 さて、診察室に入る時どんな医者がみてくれるのか、優しい人であったら良いなあ等と緊張の一瞬なのではないでしょうか。
怖そうな医者だったらどうしようか?痛い事はしないだろうか?ちゃんと話を聞いてくれるだろうか?不安と緊張が入り混じった状態で診察室に呼ばれます。
 さて、最近インフォームドコンセントということがよく言われます。医師が病気の説明をきっちりし、それを患者様がよく理解される状況をいいますが、心ある善意の医師は元来そう言ったことを常に考えて診療してきたわけです。2時間待ちの3分診療といわれますが、善意ある医師は、出来るだけ説明し、理解してもらうように努めています。その誠意が感じられるかというのが、患者様のことを考えている儲け主義でない医師です。その、誠意がチェックポイントと言えます。
 また、これは不思議なもので、友達、恋人、家族にも相性があるように、医者、看護婦と患者様にはやはり相性と言うものが存在します。相性が合えば治療も素直に進むことは、医師であれば少なからず経験することであります。相乗効果によって早く治ってしまうという事です。好循環が生まれる根本は、信頼関係に裏打ちされた相性なのです。
 こういった中で、医師のチェックポイントとしては、以下の事が言えます。

その1 挨拶ができるか
何事も挨拶から始まると考えています。朝でしたらおはようございます。昼でしたらこんにちはです。簡単なことですが非常に大切なことであると考えています。コミュニケーションの最初がとても肝心で、この言葉が、患者様の緊張をほぐす第1歩と考えます。さらに、外来が混んでいるときは、お待たせしましたの一言も大切な思いやりであると考えています。医師のほうは、患者様の体を診させて頂いているという謙虚な気持ちがよい診療につながるものと考えています。

その2 きちんと患者様の目を見てしゃべっているか?
カルテの方ばかり見てしゃべる医師はもうそれだけでバツです。コミュニケーションはカルテと取るのではないのです。

その3 患部をしっかり診ているか
医師は、まず、患部をよく診察することが大前提です。触診、視診が大切です。
手当てという言葉は、手を当てるですから、患部をよく観察する手段が手当てであり治療なのです。

その4 患者様の訴えを真剣に聞いているか
患者様の訴えは、本当にその病気の判断に役立つことばかりなのです。いつから悪かったのか、どういうふうに具合が悪いのか?
このために、医者サイドではしゃべりやすい雰囲気をまず、作ることが大切であることは言うまでもありません。患者様がしゃべってくれないと的確な判断につながっていかないのです。ただ、患者様の中には、診察と全然関係のないことをお話になる方もいらっしゃいます。どこどこに行っていたのだが治らないなどという人も中にはいらっしゃいます。医師のほうからちょっと言わせてもらうと、質問に素直に答えてほしいということです。

その5 横柄な態度で接していないか。威張ってはいないか

医師が威張るのは、学会や医師同士の会合でああでもない、こうでもないと言い合えば良い事です。患者様の前で威張り散らしている医師もたまに見かけますがこんな医師も見限るべきでしょう。医師は医学という専門分野において知識、経験があるのは当然ですし、それは患者様に威張ってひけらかすものではありません。
医師は医学分野で知識が明るいのであって、他の分野では患者様に教えてもらうことも沢山あるのです。高齢の患者様に、頭ごなしに怒る若い医者などはもっての外と考えています。そう言う意味で、医師は人格者であらなければいけないと常常思っています。

その6 丁寧であるか
言葉の丁寧さもさることながら、態度も丁寧で平常心を保てるか。

その7 誠意が感じられるか
先ほども述べましたが、どんなに忙しくても平常心を保ち、患者様に誠意を持って接しているかがチェックポイントなのですが、医師も人間、ちょっと疲れてくることもあるのが実際のところです。 

その8 いっしょに治療していく態度をもっているか
病気は、いっしょに治療して行くものです。病気によっては治らないものもあります。
そういったときでも、病気を受け入れ、なるべくそれが軽くなるように治療していくという、医師、看護婦、患者様、患者様の家族が手に手をつなぎ、病気を治してゆくという姿勢が相乗効果を生むことは言うまでもありません。

その9 薬の説明は十分か

薬の説明も、これは抗生物質という風に出来るだけ説明してくれる医師が良いでしょう。

その10 治療方針をしっかり立てて説明してくれるか
今後の大体の治療経過を説明し、治療方針をある程度立ててくれる医師が望ましいと言えます。しかし、人間の体は生身です。杓子定規にはいかないこともあることは十分理解しておいたほうが良いでしょう。

その11 必要な検査を必要なだけ
医療機関によっては、やたら血液検査をするところもあると聞きます。必要な検査を必要なだけする医療機関を選びましょう。そしてその検査の必要性を説明してくれる医師は良いと言えます。

と、ここらで一度休憩です。さらに看護師さんの態度も含めてもう少しつっこんで行きましょう。
看護師の態度
 一般的に看護は、治療とは区別されることが多いのですが、患者様の心を解し、治療が良い方に進む手助けをするという面では、治療の一環であると言えます。外来で医師が説明したり、処置している時に看護師さんが協力することは非常に大切なことです。 

その1 気配りが大切
 医師が患者様にどういうことを説明しようとしているかを察知し、動ける看護婦(士)さんは優秀だと言えましょう。患者様が治療の為に服を脱ごうとしている時に、お手伝いすることなど、患者様が行動しやすいように介助したりするのは大切なことです。
これは、気配りが出来るかどうかという、人間の根本の親切心、優しさ、余裕といったところから生まれてくる行動であると思います。

その2 処置は迅速にだが、いたわりと優しさの心が大切です。
 外科、内科を問わず、診察には処置がつきものです。血液検査、検査用紙の記入、消毒、軟膏処置など医療スタッフは沢山の仕事をこなさなければなりません。忙しいのです。しかし、ミスがあってはいけません。迅速に行えるかは、もちろん慣れるということも必要ですが、常にミスのないようにダブルチェックを行うことが必要です。
当クリニックは、形成外科、皮膚科の患者様が多く、消毒処置、軟膏処置が多くあります。もちろん処置を迅速に行うことは大切ですが、処置する患者様が生身の人間であることを頭の根本において行動することが大切であることは言うまでもありません。流れ作業にならないように心がけなくてはなりません。
 良い病院の見分け方を色々と述べてきましたが、診療していて時々思うことは、患者様を取り巻く医者、患者様と受付の事務員、看護婦(士)さん、医療スタッフとは、相性が大切だということです。相性が良ければ治療はうまくいくのです。
病気の説明し、治療方針を立て、早く治って欲しいと心から思いながら一生懸命医療サイドが頑張っても、何だかうまくいかない場合は時々あります。悔しいのですが、本当です。こういうのを僕は相性が悪いというふうに表現をしています。つまり、患者様の方が心開いてくれないばかりではなく、なんだか疑いの気持ちで説明を聞いているような場合です。この場合は、本当に治療がうまくいきません。
皆様も自分と相性の合う医療機関を選んでください。一番大切なのは、相性と信頼関係だと思っています。

さて、次は日常診療で、医療サイドの方から見た良い患者様、悪い患者様のお話をしていきます。