トン先生のコラム  徒然 その5

9 医食同源―根本的治療を求めて

 開業して今年で15年になります。皮膚科の専門医であるワイフがいてくれるために、皮膚科の分野ではきちんとした専門的な治療が確実に行えるのは開業当初より非常に助かっており、患者様にとってもより良い治療が出来るのが良きことだと思っております。

 さて、なかなか治りにくい皮膚科の疾患にアトピー性皮膚炎があります。この病気に対しては、これといった決め手になる治療が無いばかりに、民間療法を含め、今まで随分沢山の治療方法が試されました。
またそれに拍車をかける様にアトピービジネスも盛んになり、それが反って患者様を惑わせることになってしまったことは否めません。また、心無い医師が、単なる乾燥肌で痒がる皮脂欠乏性湿疹をアトピーと言うことで、患者様を不安がらせてしまい、これもまた困ったものだと思っています。実際、外来診療をしていると手の湿疹までアトピーと言う患者様が多くいるのです。言葉が独り歩きしている状態です。

 さて、掻くことがやめられない難治性のアトピー性皮膚炎の原因は、生活環境問題など様々あると思います。最近では医学的にも色々な研究もされ解明は進んでいるとは思います。しかし、その治療となると、これだ!という特効薬はまだなく、長期に患者様を悩ます厄介な病気であることは医師も認めるところです。もちろん将来的にみてもそんな特効薬ができるとは思えないのですが、そうなると治療としては、抗アレルギー剤、ビタミン剤、コントロールしながらの軟膏療法などを主体に根気良く治療して行く事になります。

 さて、もう少し大きな目でみて病気を捉えてみましょう。
 アトピーを含め、花粉症、高血圧、糖尿病など、現代病といわれる疾患に対しての治療を考える場合、やはり、どうしてもその人の生活習慣を改善するという根本的な指導と治療が必要であると僕は思っています。薬ばかりに頼っていては根本的な治療は出来ないと思うのです。 生命を健康に維持する源となるのは、空気、水、食物です。この原点から考えてみると、その根本に間違いがあると病気はなかなか治らず、治療もうまく行かないのです。

 高血圧、糖尿病、心臓疾患、メタボリックシンドロームなどと同じように、アトピー性皮膚炎の原因の根本は、食習慣の乱れ、生活環境の汚染、漢方では未病などの考えがあるように、生活の根本である食事を改善させることから治療を見直さなければならない(食育)と考えるようになりました。

 外来治療していると、普通の湿疹などは治すことがさほど難しくない場合もあるのですが、やはり、アトピー性皮膚炎、慢性湿疹、掌蹠膿疱症などはその方の生活習慣、食生活も考慮に入れてきちんとした医学的、栄養学的指導が必要だと思っています。
具体的には、完璧でないとは言うものの、ファーストフードを避け、トランス脂肪酸(マーガリン、ショートニング)を取らないようにし、日本の伝統的なマメ、ゴマ、玄米、野菜、魚、海藻、芋などを中心とした食事に変えていく必要があるものと考えています。
日本食が最近世界でも見直されるようになったのは、この考えからすると良い傾向だと思っています。食は大変大切なのです。(2008.3.22)
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